Ashrmです。ここではシクスターゲート・スタートレール(Switch版)の、もう少し高難易度コンテンツなどに焦点を当てて紹介していこうと思います。主にSupernova上級~Quasar譜面をプレイする層が対象です*1。なお、私は似た操作系を持つDJMAX RESPECT (PS4版)をそこそこプレイしていた人間なので、そういう意味では偏った立場からのコメントであることを理解してください。
基本的な情報の書かれた「初級編」はこちらをどうぞ。
概要
一応ここでも基本的なゲームプレイについて書いておきます。このゲームはDJMAX RESPECTのような、ゲームパッド型コントローラで縦スクロール音ゲーをやろうという趣のものであり、ゲームパッドに合わせた譜面が用意されています。
私はDJMAXでゲームパッド操作を前提にした音ゲーに初めて触れた時に、「スマホ音ゲーの親指操作の手軽さで実際のボタンを叩ける素晴らしい音ゲーだ」と思ったのですが、どうやら今では音ゲーマーはスマホ音ゲーを親指でプレイしないようなので、親指でやる音ゲーといったらゲームパッド操作のものに限られてくるのかもしれません。
そして、ゲームパッドでプレイする縦スクロール音ゲーという非常に狭いジャンルの中で、さらにシクスターゲート独自の要素があり、DJMAXの5Bの中央レーンのように→とYのどちらでも処理可能な時折出現する「ゲートレーン」、そしてSwitch版には「シフトノーツ」というスティックをフリックのように倒すノーツが追加されています。「シフトノーツ」で倒すスティックはどちらでもよく、倒す方向(左右)が指定されており、ここがDJMAXの操作と唯一大きく異なっている部分といえます*2。
このシステム、スマホ音ゲーで猛威を振るっていると聞く「方向指定フリック」の名詞がちらつきますが、シフトノーツの判定は通常のノーツに比べて緩くなっており、BLUE STARとRED STARの判定しかないなど、配慮があるようです。
どんなゲーム?
こうした独特な操作系がゲーム性にもたらす影響を考えてみます。
ゲームパッド操作縦スクロール音ゲーの代表格であるDJMAXで最も人気のある6Bは、直感的に*3見た目にも比較的複雑な高密度譜面を捌けて爽快になれますが、ふと我に返ると、同じ側の手の複数の指の連携すらほぼ必要なく、ただひたすら来たノーツを親指で頑張るゲームであることに気づき、虚無になってしまうことがあります。
そこで、使わなければならない指の本数を増やし、機械的な要求をより複雑化したのが8Bです。ここでは人差し指を用いる必要があり、より複雑な手の動きを要求しています*4。この、「複雑化した機械的要求」という路線の延長上に、私が普段プレイしている「キーボードで遊ぶ縦スクロール音ゲー」という種のものを置くことができると思います。私は基本的にはシクスターゲートSteam版ですら完全に固定された運指を用いてプレイしています*5。このようなゲームは、譜面に要求される処理力が高いためにゲームとして成立しています。そのようなゲームの場合、非常に高い割合で「地力」があればなんとかなり、単曲対策は実は有効ですが、一般に地力があることが前提、地力がないと対策してもどうしようもない場合が多い、という傾向がありました。このようにひたすら一般的な処理力と認識力を上げていればよいとされるゲームに慣れすぎると、単曲対策が本質的でないコミットに思えてしまうようになるかもしれません。
しかし、このようなゲームはいかに複雑な指の動きを要求しようと、ゲーム性が単なる機械的処理にdumb downされています。これが面白くない人もどうやら一定数いるらしく、DJMAXには6Bからいわば「頭脳的要求」が追加された5Bが存在します*6。これは、いわば「3/4レーンを区別しない6B」というべきもので、中央レーンの左右判断や交互に押す縦連が登場します。このようなゲーム性では「地力」のほかに単曲対策の重要度が増すことになります。特にLNがからむ場合は若干初見殺しのようにもなるなど、指は回せるが思うように譜面が処理できないというのは多くのプレイヤーにとってフラストレーションの溜まる要素であり、5Bの人気は高くありませんが、需要はあるようです*7。
そして、このシクスターゲートSwitch版ではなんとレッドノートによる機械的要求とゲートレーンによる左右判断を両方要求し、その左右判断自体がレッドノートによりさらに難しくなっています。その上で、しかも「シフトノーツ」の追加によりさらに頭脳的要求が増加し、明らかに単曲対策の重要性が増しています。ゲートレーンが現れたり消えたりすることで、4Bの窮屈さと5Bの意地悪さを併せ持ち、ただでさえゲートレーン処理に使うボタンで→かYかの判断が必要なのに、その判断がレッドノーツでさらにややこしくなり、シフトノーツを左右どちらのスティックで処理すべきかも問題になるので、ある程度覚えないといけないことも多くなると思います。おまけに高難易度になってくるとシフトノーツでスティックを倒す方向の認識すら難しくなってきます。もちろん、もともと縦スクロール音ゲーなので通常の意味での「地力」が要求される場面が依然として多いですし、左右のスティック判断をある程度パターン化して初見で処理できるようになるという意味ではこのゲームにおける「地力」の要素かもしれませんが、大概の場合、慣れるまでは「ノーツ処理はだいたいできるがコンボ接続に左スティックがほぼ必要な状況などにおいてすぐには対処できない」みたいなことになると思います*8。これはSteam版に対しても大きなゲーム性の変化だと感じます。操作系をある程度複雑化することでゲーム性の深化を試みるのは悪くないでしょう。
ここまで書くとなんだかシクスターゲートがめちゃくちゃ難しいゲームのように感じられるかもしれませんが、基本的にはこのゲームの攻略は「地力」が中心的ではあるということ*9と、このゲームの最高判定であるBLUE STARの(通常ノーツに対する)判定幅が非常に広いということに言及しなければなりません。ウィジェット「航法補正装置」を用いてWHITE STAR以下の判定が出たときに何ミリ秒ずれていたかを表示できるのですが、そこから判断するに通常(SUPERNOVA以上での)BLUE STAR判定幅は±54ms程度です*10。同じくゲームパッドを用いる音ゲーであり、判定幅が広いとされるDJMAXよりももう一回り広い判定幅です。Steam版の±36msの判定幅*11では結構注意しないとWHITE STARがすぐ出るような感覚でしたが、Switch版では「しっかり処理さえできればOK」な感じの判定幅です。
これらのことをまとめると、このゲームは、複雑な操作系を採用することによりただ親指で頑張るだけのゲームよりは機械的要求も頭脳的要求ももう少し多くを提供する上で、さらに譜面が処理できれば精度を過度に要求はしないという調整になっているようです。「初見殺しをなんとかする力」と「精度力」を両方要求していた場合、プレイヤーはスコア詰めの際に相当フラストレーションが溜まったと思われますが、精度の要求を下げたことでそれがだいぶ軽減されたでしょう*12。そして、このようなゲーム性は「機種固有ギミックにより単曲対策の重要性を増し、固定運指を時折通用しなくする」という昨今のアーケード音ゲーに近いものでもあると思います*13。
私はこのゲームを主に携帯モードでプレイしていますが、使用するコントローラに関しては議論があります。この話題はこの記事の1セクションを占める予定でしたが、記事があまりにも長くなりそうなのと、シクスターゲートから少々離れた話題になりそうなので、書くとしても別記事にすることにしました。ただ、このゲームは「Nintendo Switchで縦スクロール音ゲーを持ち運べる」こと自体が非常に大きな利点だということは強調しようと思います*14。
譜面紹介
こうしたゲーム性の一般論ばかり言っても実際の譜面を示さなければ音ゲー紹介記事ではないだろうということで、少し見てみましょう。
なお配置に関して、DJMAXでは当然のように出てくる親指1本で2ボタン処理させる同時押しや親指をスライドさせる配置は、このゲームではアクセント的にしか出てきません*15*16。結果として、大概の乱打はほぼ左右交互に少しスライドか微縦連を追加したようなものになります*17。それでも、レッドノーツやシフトノーツを絡めるだけで譜面の多様性はかなり確保できるのです。
以下の譜面画像はノートスピード300の画像をつなげて作っています。
銀世廻 (SUPERNOVA 9)
上の画像のように、左右両方のスティックを用いることによって左右交互で処理することができる、左右切り替えパターンが登場します。この譜面はレベル9であり、左右切り替えパターンが登場する譜面としては最も低いレベルがつけられていますが、このせいでレベル9の譜面の中では上位の難易度になっているのではないかと思います。これはBPM188*18の8分なのでまだすべてのシフトノーツを右スティックで取ってもさほど精度のペナルティがありませんが、レベル13あたりで普通に追いつかなくなるので、このときからしっかりと左右両方のスティックを使うことに慣れるとよいでしょう。
Azure Eyez (QUASAR 11)
レベル10~11はSUPERNOVAとQUASAR両方に譜面が存在しますが、SUPERNOVAでは初見殺しが弱くて難易度が処理力の要求に偏っている一方で、QUASARの初見殺しがやや強いと感じました*19。Andromeda 02*20 (SUPERNOVA) などは地力さえあれば簡単に高密度が処理できて爽快な譜面ですが、例えばこのQUASAR譜面ではフルコンボに少々やり直しが要求されてくるでしょう。
One Way Drive (QUASAR 12)
しかし、QUASAR譜面が初見殺しばかりというわけではなく、ほぼ通常の譜面処理の要求しかない譜面も多くあります。そして、その要求自体の程度が低くありません。この譜面はかなりDJMAX的な指使いを要求しており、レッドノートとブルーノートの連携をちゃんと認識する必要があってスコアを取るのが難しいです。このような通常の地力の要求もレベルが上がるにつれて高度になります。
Slapstick Parfait (QUASAR 13)
Steam版ではスコアを伸ばすのに大きな問題となっている24分トリルがないからと喜ぶのはまだ早く、中盤の誘導らしい誘導が少ないシフトノーツの判断や、終盤のインパクト抜群な24分(画像)といった初見殺し要素のほか、レッドノーツとブルーノーツが別々の動きをしているように見える中でのゲートレーンの左右判断といった高度な基本的要素も要求される譜面です*21。
conflict (QUASAR 14)
ここだけ個人の思い出話になりますが、私は2022年9月に開催された東京ゲームショウでシクスターゲートのSwitch版を試遊しました*22。その時に、レベル15がつけられたconflictのQUASAR譜面に特攻しました。その時に画像のような「シフトノーツ交じりの16分」に初めて遭遇し、左右判断が必要だと思った私は手も足も出ずに、最終結果は908,537点と散々な結果でした。あの時から譜面はほとんど変化していないと思いますが*23、今製品版を購入し、約2か月にわたりレベル13までを一通りプレイしてシフトノーツの取り扱いをある程度知ってからこの譜面を見ると、なんと画像の地帯のシフトノーツはすべて右スティックで取れるではありませんか。私が想像していたより案外簡単な譜面で、1発でSSを取得できました。
魔理沙は大変なものを盗んでいきました (QUASAR 14)
Steam版の譜面紹介記事でもこの曲を紹介していましたが、ネタ譜面の中でもプレイ感覚がほかの譜面と明確に違う譜面として印象深かったのでここで紹介します*24。序盤、Steam版とは異なる形で数字が再現されていますが、Switch版の操作系で可能な範囲ながら結構癖がつきやすく嫌な配置になっています。また、「シフトノーツの方向認識の難しさ」があるものの知ってさえいれば処理しやすく楽しい地帯があったり、Steam版の譜面傾向の特殊さと共通するところがあります。
414 PER SPEED (QUASAR 15)
そして、最高難易度の15です。15はSteam版の各モードよりも譜面数が多くなっています*25。15には難易度が極端に体力に振られている譜面*26と、見ただけでの対応が非常に難しい、非常に複雑で対策が必要な譜面とがありますが、この譜面の場合両方が要求されているように思われます。高速トリルに指を追いつかせるのも困難ですが、この譜面の本質は画像に示した地帯です。よく見ると左右交互ではあるんですが*27、リズムが一定でないうえにBPM414の8分なのでスティック‐ボタン間の非常に高速な飛び移りが必要なのであって、機械的要求と頭脳的要求が同時に高レベルで存在する地帯になっています。
おわりに
ここまでシクスターゲート・スタートレールSwitch版の特徴を、ある程度音ゲーをやっている人の目線で見てみました。ほとんどの人にとって音ゲーの操作系としてはなじみがなく、複雑でとっつきにくいと思われるかもしれませんが、各譜面は工夫されており、楽しくプレイできますので、あなたもNintendo Switchでこの縦スクロール音ゲーを持ち歩いてはいかがでしょうか。
*1:私は2か月ほどで全譜面プレイを達成しました。
*2:DJMAXでも「アナログノート」(Vではサイドノート)の処理においてスティックを使用するのですが「倒す方向」ではなく「倒すスティック」が指定される形であり、しかもすべてロングノートの形状をしています。
*3:個人差があります。
*4:もちろん認識力の要求も無視すべきではありません。
*5:実際は、Discordの日本語コミュニティではある程度状況に応じて指を変更する運指のほうが一般的なようです。対して私の指配置は中央レーンを右親指でのみ処理することを想定されているものですが、このような譜面解釈を放棄する姿勢を選択的に撃つような譜面も散見されている以上このプレイスタイルの問題点を意識せざるを得ません。
*6:5Bをあまりプレイしていないので、5Bの癖がどのような割合で要求されているのかよく知りません。
*7:DJMAXシリーズでは、ほかにも過去に5BFXやREMIXモードが登場したことがありますが、いずれもPSPでのシリーズ作品に登場したモードであり、現行機で遊べるものには収録されていません。
*8:ところで、最近では当たり前かもしれませんがこのゲームにコンボボーナスはないので、初見殺しができなかったところでその部分の減点しかありません。
*10:Steam版のNOVA譜面の判定幅と同じだろうという予想も入っています。なお、HARD判定でほぼSteam版と同程度の判定幅になるようです。
*11:±35msと言われることもありますが、Steam版の「航法補正装置」に現れる最小の数字が36なので「35msまではOK」と直感的に理解されているわけです。厳密には「35.xx ms」はセーフで、つまり36msを超えなければBLUE STARです。
*12:その副作用として、Steam版より理論値ゲー度合いが高まったかもしれませんが…
*13:「理論値ゲー」というシステム自体が単曲対策の重要度を高めているところはあるでしょう。
*14:Steam DeckでDJMAXが遊べるのは事実ですが…
*15:高難易度ではそのアクセントが致命傷に繋がるわけですが…
*16:ちなみに、DJMAXの5Bで特徴的とされた中央レーン縦連も少なくなっており、そのほとんどがレッドノーツで「左右交互に押してね」という誘導がついています。この誘導で左右交互以外も可能かもしれませんが…
*17:実際のところ、究極的にはこのゲームで一番難しいのはただのトリルかもしれません。私にとっては。
*18:BPM情報などは非公式日本語wikiを参照しています。ありがとうございます。
*19:「難しい曲の簡単な譜面」と「簡単な曲の難しい譜面」の違いだというのが私の受けた印象です。
*20:ADVENTURE解禁曲
*21:とはいえ、これは13以上では普通に要求されるものです。
*22:私は2プレイ(6曲)やりましたが、人が少なく、4プレイした人もいるようです。私ももう少しガツガツすればよかったかもしれません。
*23:レベル14に落ちたのは単純に今の15がより難しいからだと思います。
*24:チルパはこの記事執筆時点で未実装ですが、大きな期待をかけられていると思います。
*25:まあSTARLIGHT譜面とレベル16以上を含めた曲数で比較するとそれよりは少ないですが。Steam版で高難易度譜面が少しずつ追加されていることを受けてSwitch版では多めに用意しているのかもしれません。
*26:結局、機械的要求・頭脳的要求を少し複雑化したところで、親指で頑張る能力が非常に重要にはなってくるわけです。
*27:私は画像を見て初めて気づきました。